松川八洲雄監督特集/Bプログラム

tancho2008-03-21

Bプログラム <映像で語る、言葉で撮る。>(計82分)
『土くれ』1972年 17分
『仕事=重サ×距離』1971年 35分
『鍛金 奥山峰石のわざ』1997年 30分
上映日時:3月20日(祝) 17:00・22日(土) 19:00


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土くれ
1972年/17分/カラー/16mm(オリジナル35mm)
制作◎隆映社 脚本・監督◎松川八洲雄 
プロデューサー・撮影◎楠田浩之・喜屋武隆一郎
音楽◎木下忠司 音響◎大野松雄
■彫刻家・木内克(きのうち・よし)の "手びねり" という手法で粘土の裸婦像を作る過程を撮影したフィルムをノー・ナレーションで構成した異色作。芸術祭優秀賞受賞。

[松川監督語録]
映画をサイレント時代に戻せとは言いませんけど、カットのつながりが、漠然とにせよ、伝えたい情報を表情をもって語っていなければいけないんですね。映像から音も音楽も聞こえるくらいに。
山形国際ドキュメンタリー映画祭「Documentary Box」23号 松川八洲雄インタビューより/2004年 http://www.yidff.jp/docbox/23/box23-1-1.html

[見どころ]
「映像と音をどう組み合わせるか」について、多くの示唆を与えてくれる三本立て。まず『土くれ』は、作家とその創作過程を記録するのに何が必要で、何が不要かをわずか17分で提示する「本質映画」。全撮影素材が22分というのも驚異的です。この映画を見た後は、他のどんなナレーションも本当に必要かどうか判断できるようになりますよ!


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仕事=重サ×距離
1971年/35分/カラー/16mm 
制作◎日本リクルートセンター 企画◎三菱重工業・長崎造船所 
プロデューサー◎江口昭彦 脚本・監督◎松川八洲雄 撮影◎瀬川順一 
音響◎大野松雄 ナレーション◎岸田今日子
■長崎造船所のリクルート用映画。音楽を使わずに現実音と詩的なナレーション、そして労働者へのインタビューで構成。

[松川監督語録]
つまり言葉では感じでしかいえないイメージを、瀬川さんは、そう、このイメージぴったり、という形で具体的にフィルムに写し取る名人、獏のようなイメージ・イーターにたとえるべきかもしれない。銃猟以前は猟犬が餌物を獲り、猟師はそれを取り上げるだけだった。演出家の夢は、そのなまけものの猟師となることなのだ。(松川八洲雄・著『ドキュメンタリーを創る』151ページより/1983年)

[見どころ]
高校生向けの就職説明会で上映するフィルム…という出自からは想像できないほど、自由で楽しい35分の映画体験。『戦ふ兵隊』から『奈緒ちゃん』まで50年以上活躍した名カメラマン・瀬川順一氏の「イメージの狩人」としての手腕が最高に発揮されたショットの数々と、それをしなやかに受け止める岸田今日子さんの詩的なナレーションによって、松川ファンの中でも特に支持が高い作品です。


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鍛金 奥山峰石のわざ
1997年/30分/カラー/DVD版(オリジナル35mm)
制作◎岩波映画製作所 企画◎文化庁 プロデューサー◎田村恵
脚本・監督◎松川八洲雄 撮影◎八木義順 ナレーション◎中西妙子
■金属を槌で叩いて打ち延ばしながら器物を成形する日本の伝統的な金工技術「鍛金」。重要無形文化財・奥山峰石氏が保持する技法の克明な記録。シカゴ国際映画・ビデオ祭 銀賞受賞。

[見どころ]
東京都北区、都電荒川線沿線の小さな一軒家に「魔法使い」が住んでいた!単なる金属の板きれも、奥山さんが木槌でカンカン、トントンと叩き続けるうちに、美しい壺や器に変貌していく驚き。上映中は客席から「ほおー」「わあー」という呟きが必ず漏れる一作です!