【ご案内】松川八洲雄監督特集


多様な映像作品を遺し2006年10月に世を去った
記録映画作家・松川八洲雄。
映像ジャンルを横断しつつ展開された
孤高の映画作家としての一途な創作活動を、
作品の上映と討議によって検証していく回顧特集。

松川八洲雄:まつかわやすお
1931年8月12日、東京生まれ。東京大学文学部美学美術史学科卒業。新理研映画社、日映科学映画を経て、日本デザインセンターで『一粒の麦』を手がけ、以後フリーに。美術映画、文化記録映画、PR映画、テレビ作品などの多様なジャンルで創作活動を展開。1966年には『鳥獣戯画』がイタリア・ベルガモ映画祭芸術部門大賞を受賞。近年も『出雲神楽』がキネマ旬報文化映画部門で第一位になるなど国内外での評価も高く、生涯の監督作品数は100本に迫る。『とべない沈黙』(1966)は、自らの少年時代の体験をモチーフとして書いた松川監督のシナリオを、黒木和雄監督が映画化したもの。著書として『ドキュメンタリーを創る (1983年)』(農山漁村文化協会)などがあり、装丁、挿絵も手がけた。2006年10月11日逝去。


2007年2月14日(水)〜17日(土)
主催:「松川八洲雄監督特集」実行委員会
会場:アテネ・フランセ文化センター
http://www.athenee.net/culturalcenter/
■上映プログラム
2月14日(水)・・・・・・・・・・・・・・・・・
16:10-

『ムカシが来た〜横浜市長屋門公園 古民家復元の記録』
1993年/45分/ナレーター:浜美枝
江戸時代の古民家の復元移築作業の記録。伝統的な建築方法、素材、道具、職人の技などを見つめ、ワザやモノが語りかける言葉に耳を澄ましていく。

『飛鳥を造る〜法隆寺三重塔といかるが寺の工たち』
1976年/50分/音楽:間宮芳生
第二次世界大戦中に落雷で焼けた法隆寺三重塔を、寺大工・西岡常一を棟梁に飛鳥時代の工法で復元・再建しようとする挑戦の記録。

18:00- トーク
間宮芳生(作曲家)×日向寺太郎(映画監督)×阿部嘉昭(評論家)
19:20-

『一粒の麦』
1962年/28分/企画:アサヒビール
アサヒビールの依頼で、二条大麦の品種改良を通じて遺伝という生命現象を映像的に描いた科学映画。実質的な監督デビュー作。

鳥獣戯画
1966年/30分/ナレーション:芥川比呂志
国宝・鳥獣戯画の中に、歴史の表には現れない庶民の姿を見、その怨嗟の声を読み取り物議を醸す。絵コンテを描いて切り貼りする編集方法を編み出した。イタリア・ベルガモ映画祭芸術部門大賞受賞。

ヒロシマ・原爆の記録』
1970年/30分/ナレーション:宇野重吉
原爆投下後一月後に撮影されたフィルム、資料館遺物や写真をコラージュした証拠資料による映像証言。映画的嘘を排し、遺されたモノで原爆を受けたヒロシマとそこに生きていた人々を描き出そうとした。

2月15日(木)・・・・・・・・・・・・・・・・・
16:10-

『ヘルメットの男たち』
1969年/67分/ビデオ版上映/企画:竹中工務店
竹中工務店創立70周年記念映画。内勤と現場で働く社員たちへのインタビューのみで構成された「証言集」。生態観察のように集めた映像から「ある一日」を創る試み。

『仕事=重サ×距離』
1971年/30分/ナレーション:岸田今日子
長崎造船所のリクルート用映画。音楽を使わずに現実音と詩的なナレーション、そして労働者たちへのインタビューで構成。名コンビ・瀬川順一カメラマンとの初顔合わせ。

18:00- トーク
中谷健太郎(由布院・亀の井別荘)×野村正昭(映画評論家)
19:20-

『土くれ〜木内克の芸術』
1972年/17分/芸術祭優秀賞受賞
彫刻家・木内克が手びねりという手法で粘土の裸婦像を作る過程を撮影した22分の素材を17分に編集。ノー・ナレーションで映像により語りかける珠玉の一篇。

『hands・手』
1975年/30分/企画:モービル石油
6人の人間国宝−染織の芹沢圭介・千葉あやの、刀剣の宮入行平、友禅の森口華弘備前焼の藤原啓、和紙の安部栄四郎を"説明ではなく表現として"描く。ノー・ナレーション。

『花の迷宮』
1986年/31分/企画:小原流
小原流三代目・小原豊雲…幻想的な花の世界を作り出す"現代のボッシュ"を、ナレーションを排し凝視することで作品と人間に迫っていく。

2月16日(金)・・・・・・・・・・・・・・・・・
15:30- トーク
土本典昭(記録映画作家)ほか
17:00-

吉野作造 マイ・ブルー・ヘブン デモクラシーへの問い』
2002年/44分/制作:紀伊国屋書店・ポルヶ・桜映画社
民本主義を唱えた大正デモクラシーの立役者、政治学者・吉野作造。テロルの季節であった大正時代から「9.11」までを一気に語りきる"日本の青春"論。

中江兆民 一粒の民主の種子を』
2003年/49分/制作:紀伊国屋書店・ポルヶ/出演:坂本長利
自由民権運動の思想的指導者・中江兆民の伝記と見せて、彼の残した「三酔人経綸問答」によりイラク開戦前夜の現代日本を告発した。初めて俳優を起用した作品。

19:00-

『琵琶湖・長浜 曳山まつり
1985年/32分/ナレーション:原ひさ子
近江長浜の子ども歌舞伎「曳山まつり」。5歳から12歳までの男の子たちを、働き盛りの若い衆が”先輩”としてつきっきりで教える様子から、地域での民俗の伝承を描く。

『歌舞伎の魅力 景清の衣装』
1994年/33分/ナレーション:加藤武
歌舞伎十八番「景清」の稽古と本番を通して、歌舞伎における衣裳の役割と魅力を解き明かす。團十郎が「景清」を演じ終えると、見事なラストシーンが…。

『神々のふるさと 出雲神楽』
2002年/41分/企画:ポーラ伝統文化振興財団
出雲地方の4地域の神楽を歴訪、今も続くヤマタノオロチ神話を介した「神と人との交流の場」として観察し、日本人の原初を探る。

2月17日(土)・・・・・・・・・・・・・・・・・
13:00-

『不安な質問』
1979年/85分/制作:たまごの会映画製作委員会
消費者たちが建設した自給農場「たまごの会」の会員たちによる自主制作映画。作り・運び・食べることで、日本の農と食を問う。

14:40- トーク
宮下英一(制作=予定)×中島洋(撮影)×柳田義和(撮影)×弦巻裕(録音)ほか
16:00- 参考上映[入場自由]

『今は昔 志のとおきな』
1968年/45分/ビデオ版上映/ナレーション:宇野重吉
桃山時代志野焼を復活させた人間国宝荒川豊蔵。彼を文人画の中の人物として「民話」風に語るフィクショナルな構成で、「今」と「昔」を一つに結びつける。

『青森発・縄文元年・日本〜三内丸山縄文遺跡』
1996年/22分/ビデオ版上映/ナレーション:山口果林
かねてから縄文人の子孫を自負していた松川監督。縄文文化への見方を変えた三内丸山の発掘から、かの時代の豊かさを謳いあげる。

『オオシカの村』
1993年/59分/ビデオ/ナレーション:佐藤オリエ
父・松川伊勢雄の故郷である長野県大鹿村に、縄文の血をひく原日本人の存在を読み込むと同時に、この過疎の村に現代日本の問題の縮図を見る試み。

熊野古道
2006年/15分/ビデオ版上映/ナレーション:北村昌子
三重県熊野古道センター館内上映作品。熊野の森に豊かな森林文化を築いていた原初日本を見る。やがて弥生人の稲作により森は切り開かれていくが、熊野は霊場となり極楽浄土願望の場に生まれ変わる。

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各回入替制/トーク・参考上映は入場無料
一般=1回券1,000円・2回券1,500円

ドキュメンタリーを創る (1983年) (人間選書〈66〉)

ドキュメンタリーを創る (1983年) (人間選書〈66〉)