555『女の生きがい』

 
 
 
1972年/32分/白黒 制作■学研映画
製作■原正次 石川茂樹 企画■鴨明男 栗山富郎
脚本・監督■長田紀生 撮影■三宅義行 佐藤覚 照明■石橋等
編集■近藤光雄 記録■森靖子 効果■福島幸雄 音楽■浜坂福夫
助監督■片桐康夫 小泉堯史 進行主任■小山孝和 陶芸指導■辻清明
協力■伊勢丹 文学座
出演■木村夏江(尚子) 飯沼慧(尚子の父) 下川辰平(芹沢) 林秀樹(吾郎)
   八木昌子(万引きする主婦) 荒木道子(尚子の母キヨ)
   相馬剛三 岡野耕作 高須準之助 三浦仁 浦川麗子 二宮さよ子 内海和子
女の生きがいは「結婚、家庭、子ども」でしかないのだろうか?40代のキヨ、30代のもとえ、20代の尚子。それぞれの生き方を求める姿を描く。

デパートに勤めている尚子が、品のよい中流婦人の万引の現場を見たことから人生についての疑問を抱き、婚約者を捨てて陶芸に打ち込むようになる、というドラマを通して、見る人に「生きがい」を考えさせようとする。23歳の尚子と彼女の母(48歳)と高校の恩師(34歳)と、世代の違う三人の女性の意見を対比しているので、見る人それぞれの年齢に応じて身近な問題として考えるであろう。つまり、だれの考え方がいいか悪いか批判するよりも、まず自ら考えるようにすることが先決である、という意味で社会教育の場における婦人ないしは青年学級に使用して効果が得られるであろう。その場合、重要なモティーフになっている陶芸家の芹沢竜造の登場は、環境的条件がいささか特異すぎて、はたしてどれだけ役立つか、疑問視されるし、大学受験をやめるという弟の立ち場が弱いものになっていることも否めない。それらの人たちの視野や世界が、見る人との間にどのような共通点を持つか、そこのところの処理を考える必要があろう。
それはともかく、この種の人生問題は映画にとりあげにくい素材であるにもかかわらず、敢然それに立ち向い、見る人自身に考えさせようとした意欲的な企画は認められてよいと思う。
(大内秀邦/キネマ旬報 No.591・1972年11月下旬号「文化映画」)

長田紀生【おさだ・のりお】
1942年生まれ、中国北京出身。1965年に早稲田大学卒業後、東映の専属脚本家となる。1970年以降はフリーとして多くの脚本を執筆するほか、監督、プロデュース、ドキュメンタリーの構成、作詞など幅広く活躍する。脚本作に『地獄の掟に明日はない』(1966年/降旗康男監督)『博徒解散式』(1968年/深作欣二監督)『軍旗はためく下に』(1972年/深作欣二監督)『修羅雪姫』(1973年/藤田敏八監督)『犬神家の一族』(1976年・2006年再映画化/市川崑監督)『夜汽車』(1987年/山下耕作監督) など多数。監督作にテレビドキュメンタリーシリーズ「のびる子教室」(TVK)、短編作品『女の生きがい』(1972年)。<fjmovie.comより>
http://www.fjmovie.com/main/interview/2014/04_number10.html
1974年、自らの脚本作『ナンバーテン・ブルース さらばサイゴン』で監督業に進出。同年から1975年初頭にかけての約4か月間、ベトナム戦争の戦時下にあるサイゴン(現在のホーチミン市)でのロケーション撮影を敢行する。同作は完成したものの公開されず、長田がそれ以降、映画の演出を手がけることもなかった。2012年、『ナンバーテン・ブルース さらばサイゴン』のネガ原版フィルムおよび0号プリントが、東京国立近代美術館フィルムセンターNFC)に寄贈され所蔵されていることが判明。修復とデジタル編集を行ない、2014年4月26日に公開された。(Wikipediaより)


上映作品協力■東京都立多摩図書館

会場■千代田区立日比谷図書文化館(旧・日比谷図書館)4階会議室
都営地下鉄三田線 内幸町駅 A7出口より徒歩3分
東京メトロ 丸の内線/日比谷線/千代田線 霞ヶ関駅 C4・B2出口より徒歩5分