482『青年の虹』


1962年/60分/白黒
制作:英映画社 製作:高橋銀三郎
企画:大蔵省銀行局・貯蓄増強中央委員会
演出:今泉善珠 脚本:鈴木政男 撮影:黒田清己 照明:浅見良二
美術:小林正義 録音:田中義造 編集:河野秋和 音楽:廣瀬量平
演出助手:沢登祥恵 製作主任:高木邦治
出演:仲村秀生(三郎)山本学(淳一)星紀市(亘)長内美那子(ゆき)
   坂下文夫(修二)大町文夫(清造)中村美代子(さと)
   富田洋 兵庫博臣 川内祥子 大塚郁子 鈴木光子 沢崎とし子
   長谷川宏子 柄野和恵
輸出用豆電球を作る小さな町工場「藤井電気」。作業責任者の三郎は、
残業続きで不満を募らせる工員たちと経営主との間で悩み、ついに工場を
飛び出すが…。零細企業に働く若い従業員や経営者の悩みを描く劇映画。

今泉善珠【いまいずみ・よしたま】 1914〜1970
愛知県新城市生まれ。東京・高輪中学卒。1931年松竹蒲田現像部に入社。PCL現像部を経て、1935年東宝映画編集課へ。山本薩夫田園交響楽』(1938) 熊谷久虎『上海陸戦隊』(1939) などの編集を担当。1940年に芸術映画社へ移籍し、鉄道記録映画『機関車C57』の演出で注目される。戦時統合で朝日映画社に移り応召。復員後は東宝黒澤明の『素晴らしき日曜日』(1947) の編集、『野良犬』(1949) の助監督を務める。1952年、近代映画協会新藤兼人『原爆の子』の助監督を経て、『村八分』で長編劇映画を初監督。長編第2作『燃える上海』の後は記録映画、短編劇映画を多数演出。東映教育映画部での『きよ子ちゃんの日記』、英映画社での『青年の虹』などが高く評価される。
[主な作品] 1940:機関車C57 1942:アルミのできるまで 1945:知られざる戦士 1952:村八分 1954:燃える上海 1955:新しき出発 1956:名犬ものがたり、Japanese Carpenter 1957:パリからの手紙、きよ子ちゃんの日記 1958:ぼくらも負けない 1959:すみ子先生 1960:故郷のたより 1961:玄界灘の子どもたち 1962:青年の虹 1963:日本一物語 1964:明日への虹 1966:チャコちゃん(TBS) 1967:あなたも管理者 1968:われら日本人 1969:C400を創る

 場末あたりの、れいさいな家内工場では、輸出むけのクリスマス用電球を製作し、二〇歳前の男女工員が一〇名ぐらいで働くが、まいど残業がつづいて不平がたえない。昔かたぎの工場主は口やかましく、また注文伝票のよみちがえなどでまたもめる。工場主の息子は父とちがって新しく経理士などと相談の上、従来のドンブリかんじょう式な工場経費と家庭生活費とを区別して経営の合理化にかかる。そして連続残業と不良品増加の悪じゅんかんを究めたり、つづく工員間のゴタゴタにはなやまされながらも、はじめての点滅電球の製作に踏切るという。
 題名は不明ながら、映画は労組問題以前の、れいさい企業の経営向上をねらう。つまり難関な小事業主に対する啓発でめずらしく、そのいみでは一応の成功作とみられる。これも産業映画だが、特に割切ってみるべき文部省特選作。(加藤松三郎/キネマ旬報 1962年8月上旬号)

会場:千代田区立日比谷図書文化館(旧・日比谷図書館)4階会議室
都営地下鉄三田線 内幸町駅 A7出口より徒歩3分
東京メトロ 丸の内線/日比谷線/千代田線 霞ヶ関駅 C4・B2出口より徒歩5分