065『赤ちゃんと血液型』
1967年/30分/カラー/制作:学習研究社/
製作:原正次/企画:石川茂樹/監督:畑正憲/脚本:秋山智弘/
撮影:岩間勇水・金子泰生/演出補:建部賢太郎/音楽:瑞山貢明/
解説:平光淳之助/指導:合瀬徹(淀川キリスト教病院 医務部長)/
後援:毎日新聞社大阪本社社会部(同社刊「ママの血液型」より)
新生児の重い黄だんによる脳性マヒは、幼い生命を危くする。原因の母と子
の血液型不適合とは何だろう。一人の赤ちゃんの例を通してその適切な処置
を描いたもの。
畑正憲【はた・まさのり】
畑正憲とは - はてなキーワード
主な作品:細胞分裂、アメーバの運動(1962)動物の生殖-腔口生物-、原生動物、哺乳動物の発生(1963)現代病にいどむ-自律神経失調症-(1965)純白の太陽(1966)赤ちゃんと血液型、血液の循環、生きている海岸線(1967)子猫物語(1986)クルタ・夢大陸の子犬(日本語版監督・脚本/1995)
……忘れられないのは寺田さん夫婦とその一粒種の幸子ちゃんをカメラ
に収めた時のことである。寺田さん夫婦は、血液型の不適合から、つぎ
つぎに子供をなくした。うむたびに黄いろになって死んでいった。寺田
さんは、幸子ちゃんを得るまでに、五人の子供をうしなっていた。
合瀬先生(淀川キリスト教病院)が、寺田さん夫婦を最後に診察した
医者であった。先生は、科学を信じてもう一人生みなさいといった。
そのもう一人が幸子ちゃんであった。
元気でかわいい子であった。
ぼくたちは、三人手をつないであるいて下さいといった。カメラが
まわりはじめ、三人は、楽しそうにあるきだした。
10秒………20秒………1分。
10秒まわせばいいと思っていたが、楽しげな三人をみていると、胸が
つまって「カット」という言葉がでない。涙で三人の姿は見えなくなっ
てしまった。
映画ができあがったとき、三人があるくうしろ姿は、映画常識では
考えられないほど長かった。しかしつなぎこむと、決して長すぎること
はない。あのとき、もしぼくが覚めた技術者であったなら、10秒でカッ
トを命じていたことだろう。
素材の強さもあろう。技術の巧拙もあろう。がなによりも力強く現実
を切り取るものは、ぼくたちの心である。真実は、ごく平凡なところ
に、ふつうの顔つきで立っている。
(畑正憲・著『もの言わぬスターたち 記録映画と動物と』
73〜74ページ"カットを拒むもの"/経済往来社/1970年6月15日発行)
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