024『特別天然記念物 ライチョウ』

1967年/32分/カラー/制作:日本シネセル/企画:文化財保護委員会/
監督:下村兼史/脚本・編集:樺島清一/撮影:伊藤三千雄・赤松威善・村瀬昭夫/
音楽:三善晃/解説:城達也
生きるための戦いを続けながら立派に種族を保存し、器用に生きている
ライチョウの生態を、日本アルプスの富士に四季を通じて追いその生活を
描く。

下村兼史【しもむら・かねし】
1903年佐賀市生まれ。慶応義塾大学文学部中退後、1925年農林省嘱託となり日本野鳥学会の内田清之助博士の指導で野鳥の生態写真を撮るうち、写真だけに満足できず、映画による研究へと進む。
1939年理研科学映画に入社し『水鳥の生活』を発表、1940年『或る日の干潟』で文化映画の監督として一躍名を上げる。これは早春の河辺に集まる鳥類や魚貝の生態を望遠レンズで辛抱強くとらえたもので、観察の細かさと素朴な詩情は当時の文化映画の中の秀作と評価された。1942年にはホトトギス科の慈悲心鳥の托卵を見せる『慈悲心鳥』を完成。托卵とは他の野鳥の巣に卵を産みつける鳥の一つの生き方で、孵化した宿借りヒナは宿主のヒナを巣から押し出して居すわり、それに気づかぬ仮親は、わが子と思い餌を運び、育てられたヒナは成長すると実の親の呼び声に飛び去るという自然界の本能や習性を示すもので、この映画は後年イギリスの鳥類学会が托卵説を実証する記録としてその価値を認めたという。
終戦後の1946年理研映画を退社し東宝教育映画に転じる。1955年には東映教育映画部に入り、富士山とその周辺の四季にわたる動植物に焦点をしぼった『富士は生きている』(1956)を発表。1967年、日本シネセルに招かれて撮った『ライチョウ』では、文化庁文化財保護委員会の企画により日本アルプス立山と富士山に採算を度外視するほどの長期撮影を敢行、環境適応にすぐれ季節に応じて羽毛の色を変え、氷河期の遺存生物としても貴重な特別天然記念物雷鳥の特性を見事に記録した。映画完成後まもなく病を得、1967年4月27日逝去。『北の鳥・南の鳥』『野外鳥類図譜』『カメラ紀行』『原色狩猟野獣図鑑』ほかを出版している。
主な作品:水鳥の生活(1939)或日の干潟、富士山麓の鳥(1940)島(1941)慈悲心鳥(1942)山と水(1945)ちどり(1947)鶴と子供たち(1948)こんこん鳥物語、大豆の話(1949)或る日の沼池、雀の生活(1951)鶴の来る村、カラス(1953)干拓、開発地点をめぐる(1954)富士は生きている、或日の草むら(1956)或日の内海(1957)特別天然記念物 ライチョウ(1967)

原色野外鳥類図譜 (1945年)

原色野外鳥類図譜 (1945年)


おもてなし報告↓
http://d.hatena.ne.jp/shimizu4310/20050330